SSブログ

「カセットテープ・ダイアリーズ」 [映画(新作)]

blinded.jpg
Blinded by the Light
2019イギリス
監督:グリンダ・チャーダ
原作:サルフラズ・マンズール

出演:ヴィヴェイク・カルラ、クルビンダー・ギール、ミーラ・ガナトラ、ネル・ウィリアムズ、アーロン・ファグラ、ディーン=チャールズ・チャップマン、ロブ・ブライドン、ヘイリー・アトウェル、デビッド・ヘイマン、サリー・フィリップス

 以前NHKのドキュメンタリーで、ブルース・スプリングスティーンの東ドイツでのコンサートが、1989年のベルリンの壁崩壊を押し進めたというのを観て、音楽の力に感動したのを思い出しました。

 本作は、1987年のイギリスで、パキスタン系移民の高校生が、ブルース・スプリングスティーン(=ボス)の音楽との出逢いをきっかけに、自身の人生を変えて行く物語です。
 高圧的な父親、移民への偏見、将来への不安。閉塞した日々を送る彼を救ったのは、カセットテープのボスの歌だった・・・。

 スプリングスティーンの歌は born in the U.S.A くらいしか知らなかったのですが、本作で流れる歌はどれも良かったです。主人公にどれほど影響力があったか、歌詞をフィーチャーした演出が効果的でした。

 ヴィヴェイク・カルラが主人公を生き生きと演じ、「1917命をかけた伝令」の演技が記憶に新しいディーン=チャールズ・チャップマンが彼の親友を好演していました。

 経済の疲弊、人種差別、移民問題といった、現代にも通じる暗い世相の中、夢に向かって歩き出す主人公と、愛ある家族の姿が希望を感じさせてくれます。

 いい映画でした。ウォークマン(カセットテープ)の時代なのでファッションなど古臭いけど懐かしかった。そして、音楽の威力は凄いと改めて思いました。

****


nice!(10)  コメント(6) 

「兄弟の血」Aルースルンド&Sトゥンベリ [本]

兄弟の血―熊と踊れII 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

兄弟の血―熊と踊れII 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/09/19
  • メディア: 文庫

兄弟の血―熊と踊れII 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

兄弟の血―熊と踊れII 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/09/19
  • メディア: 文庫

 アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリ著。
 先日読んだ「熊と踊る」の続編です。

 刑期を終えて出所した長男レオが、獄中で出会った男と共に、自分を逮捕した警部への復讐を企てるストーリー。

 大胆不敵な略奪計画の成り行きは、スリリングで引き込まれました。臨場感溢れる描写が秀逸です。
 更生した弟たちも巻き込まれてしまうのか、深い闇を抱える警部の予想外の行動など、ハラハラの展開でした。
 前作同様、過去と現在を行き来する構成が効いて、レオの破滅的な生き様に胸が締め付けられます。犯罪者としてしか生きられないレオは、とても興味深いキャラクターでした。

 「熊と踊る」は実際の出来事も含んでいましたが、本作は完全なフィクションとのこと。特殊な環境下での家族の関係性、それが人間形成に与える影響を、より深く抉っていて、前作以上の面白さでした。



nice!(4)  コメント(0) 

「一度も撃ってません」 [映画(新作)]

ichidomo.jpg
2020日本
監督:阪本順治
脚本:丸山昇一

出演:石橋蓮司、大楠道代、岸部一徳、桃井かおり、佐藤浩市、豊川悦司、江口洋介、妻夫木聡、新崎人生、井上真央、柄本明、寛一郎、前田亜季、渋川清彦、小野武彦、柄本佑、濱田マリ、堀部圭亮、原田麻由

 こちらもジャズがよく似合う映画でした。

 石橋蓮司主演のハードボイルド(?)はそそられます。
 阪本順治監督は、前作「半世界」も良かったので期待して観ました。


 裏社会に通じる売れない老作家、市川。彼は殺し屋の狙う標的の行動を調査し、殺害時の状況を取材して小説を執筆していた。ある日、別の殺し屋に狙われていると知った市川は動揺する。彼の不審な行動に浮気を疑った妻は、彼の行きつけのバーを訪ね・・・。


 昼は妻に頭が上がらない冴えない石橋蓮司が、ハードボイルドを気取って夜の街に繰り出す姿はそれだけで可笑しい。

 バーに集まる人々の人間模様は笑えてほっこりさせられます。

 大楠道代と夫の浮気相手と疑う桃井かおりとのやり取り。佐藤浩市と寛一郎のがっつり絡んだ親子共演。妻夫木聡のらしくない殺し屋。井上真央の逞しいシングルマザー。バーの訳ありマスター新崎人生。岸部一徳、豊川悦司・・・皆キャラが立っていて、味のある役者揃いで演技を観ているだけで楽しい。

 桃井かおりが歌う情感たっぷりの『サマータイム』もとても素敵です。

 程よい笑いと、哀愁と、大人のロマン・・・豊かな気持ちになれる、いい映画でした。

****

nice!(15)  コメント(6) 

「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」 [映画(新作)]

rainyday.jpg
A Rainy Day in New York
2019アメリカ

監督・脚本:ウッディ・アレン
出演:ティモシー・シャラメ、エル・ファニング、セレーナ・ゴメス、ジュード・ロウ、ディエゴ・ルナ、リーブ・シュレイバー、レベッカ・ホール、チェリー・ジョーンズ

 大学生のギャツビーの恋人アシュレーがニューヨークで有名な映画監督の取材をする事に。生粋のニューヨーカーのギャツビーは同行してロマンティックな週末を過ごそうと張り切る。しかし、重なるハプニングで二人はなかなか合流できない。

 雨の降るニューヨークの一日に恋人たちが体験する出来事がコミカルに描かれます。

 軽妙洒脱な語りで恋愛の機微を描いた可愛い映画でした。ウィットに富んだ会話と、個性的なキャラクターの数々が楽しい。登場人物たちの金持ちぶりや自己チューぶりはちょっと鼻につきますが・・・。


 彼女と過ごす週末に浮かれ、彼女に放ったらかしにされて拗ね、元カノの妹の口撃にタジタジ、などなど様々なティモシー・シャラメが見られます。ピアノの弾き語りも良かった。

 エル・ファニング、セレーナ・ゴメスもチャーミング。ジュード・ロウもいい感じでした。

 ニューヨークの街並みとジャズピアノの音色は、雨によく似合う。ほろ苦さも混ざった、ロマンティックなラブ・コメディでした。ラストのオチも嫌いではありません。

 台詞が多いので頭フル回転でした。いつか吹替で映像と音楽をじっくりと堪能したいと思います。

****


nice!(3)  コメント(2) 

「ミレニアム 死すべき女」ダヴィド・ラーゲルクランツ [本]

ミレニアム 6 上: 死すべき女

ミレニアム 6 上: 死すべき女

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/12/04
  • メディア: 単行本

ミレニアム 6 下: 死すべき女

ミレニアム 6 下: 死すべき女

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/12/04
  • メディア: 単行本

 「ミレニアム」三部作の著者、スティーグ・ラーソンの死後、ダヴィド・ラーゲルクランツが受け継ぎ執筆した三部作の三作目です。

 登場人物が多く、慣れない発音の名前が多いので一気に読まないと人物の相関関係を忘れそうなのですが、そうでなくても先が気になって一気に読ませる面白さでした。

 ストックホルムで発見された身元不明の男の死体。そのポケットにはミカエルの電話番号が入っていた。ミカエルは男の死を巡る謎の解明に乗り出し、リスベットに調査を依頼する。その頃リスベットは身を隠して双子の妹カミラとの対決に備えていた。


 相変わらず頭脳明晰で孤高に生きるリスベットが格好いい。敵には容赦のない彼女が、信頼する人に見せる不器用な優しさには切なくなります。

 冷静沈着な彼女がカミラの存在に心が揺れる姿には胸が痛みました。

 一作目から読んできて、ミカエルとリスベットの一心同体のような強い絆が好きでした。これでもう二人に会えないのかと思うと寂しい限りです。


nice!(11)  コメント(4) 

「熊と踊れ」Aルースルンド&Sトゥンベリ [本]

熊と踊れ(上)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

熊と踊れ(上)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/09/08
  • メディア: 文庫

熊と踊れ(下)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

熊と踊れ(下)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/09/08
  • メディア: 文庫

 三人の兄弟と幼馴染みの男が、軍の武器庫から大量の銃器を奪い、凶悪な銀行強盗を繰り返す様を描いた犯罪サスペンスです。

 スウェーデンで起きた事件をモデルにしていて、作者の一人ステファン・トゥンベリは実際に事件を起こした三人の他の兄弟というのは凄い。その所為もあってか、用意周到に次々と銀行を襲撃する描写はリアリティがあります。

 面白いのは、犯罪をベースにひとつの家族の愛憎が繊細に描き出されているところ。「カラマーゾフの兄弟」みたい。暴力的な父親に育てられた三兄弟と一家の過去、兄弟の絆、父親との関係性など、人物の内面に迫る文章に引き込まれます。担当刑事の家族のエピソードも気になる・・・。

 最後はどこか悲しい余韻が残ります。読み応えある作品でした。

 「ミレニアム」シリーズも手掛けたヘレンハルメ美穂さんの邦訳は自然でとても読み易い。続編も気になるし、アンデシュ・ルースルンドの他の著作も読みたいと思います。


nice!(6)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。