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「美しき愚かものたちのタブロー」原田マハ [本]

美しき愚かものたちのタブロー

美しき愚かものたちのタブロー

  • 作者: マハ, 原田
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/05/31
  • メディア: 単行本

 日本の実業家、松方幸次郎が1916年ごろから10年間で収集した西洋の美術品「松方コレクション」。第二次世界大戦時にフランス政府に接収されていた作品は、戦後の粘り強い交渉の末、一部を除いて1959年に返還された。
 この時のコレクションの受け入れ先として建設されたのが、2016年に世界文化遺産登録された国立西洋美術館でした。

 本著では、松方幸次郎の波乱万丈の人生、彼が収集したコレクションが辿った苦難の歴史と関わった人々、そして国立西洋美術館が完成するまでの経緯が描かれていました。事実を基にしたフィクションです。


 ”事実は小説より奇なり”の通り、ドラマチック過ぎる、夢のような冒険譚にワクワクでした。

 松方幸次郎という人物と西洋絵画に魅せられ、日本に美術館をという夢の実現に人生を賭けた人々の情熱の人間ドラマはとても感動的。第一次世界大戦前後から第二次世界大戦後まで、時代を前後に切り替えながらの原田マハさんの軽快な文章に引き込まれます。

 人間を動かすタブロー(絵画)の力と、それを守り継承していく事の意義についても深く考えさせられました。

 美術史家の田代雄一が、異国の風景や本物の芸術作品に触れた時の感動の描写は生き生きとして感情移入させられる。特に松方氏と共にジヴェルニーのモネを訪ねるエピソードは興味深かった。フランスに行きたい、ルーブル美術館に行きたい。本物の絵画を観たい。私も憧れの想いが込み上げて来ました。


 コロナで休館していた美術館再開も決まったようなので、もう少し落ち着いたら、国立西洋美術館にも行こうと思っています。


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無題 [映画その他]

 ご無沙汰していました。

 4月、5月と新型コロナによる自粛の上仕事の繁忙期が重なり、ブログ更新の気力がなかなか湧かなかったのですが、少しずつ復活します。

 映画を家で観ても頭に入って来ないと言うか、あまり楽しめない状況でしたが、今週「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」を観直したら何だか元気が出ました。

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 アバの音楽も、三人のパパもとても素敵です。トキメく事が出来る映画はこういう時だからこそ必要だと思いました。

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 音楽と言えば、「ロケットマン」も観直しました。エルトンジョンの曲とタロンのパフォーマンス、何度観ても感動します。


 普通だと思っていた事が、とても有難い事だったのだと痛感しています。
 心底生活を楽しめる日が早く戻って来ますように。


 結局、緊急事態の自粛期間中は何をしていたか思い出せない有様です。
 ただ、自粛前の2月に引き取っていた猫たちには救われました。

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 年齢8ヵ月の姉妹、きじととら(仮)です。

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「おかえり、ブルゴーニュへ」 [旧作(DVD・TV)]

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Ce qui nous lie
2017フランス
監督・脚本:セドリック・クラピッシュ
出演:ピオ・マルマイ、アナ・ジラルド、フランソワ・シビル

 映画館に行けないので、家で録りためた映画をひとつずつ観ています。

 本作は「スパニッシュ・アパートメント」などのセドリック・クラピッシュ監督作品。彼も好きな監督の一人。原題の意味は『私たちを繋ぐもの』です。


 フランス、ブルゴーニュ地方のドメーヌ(ワイン生産者)の一家の物語です。

 家出した長男が父危篤の知らせに10年ぶりに帰宅する。
 やがて亡くなった父の跡を継いだ妹、結婚して婿養子に入ったドメーヌの家を手伝う末の弟。三人が協力して亡き父のワイナリーでワイン造りをしながら、家族の絆を取り戻し、それぞれの抱える問題に向き合う一年間を描き出します。


 味わい深い人間ドラマと同じ熱量で、ワイン造りの過程が丁寧に描写されていました。

 ワインは詳しくないので、ぶどうの栽培から収穫、発酵、熟成と、ワイン醸造の過程がよくわかって興味深かった。
 ワイナリー毎に品種や栽培方法、収穫時期、茎取り(除梗と言うらしい)の割合などが異なり、造り手の個性が強くワインに反映するのも、なるほどと思いました。ワイン造りの奥深さに感動します。

 減農薬や手造りに拘り独自のワインを追求する妹を中心に描かれる三兄弟の、ワインに対する情熱、また家族や故郷への愛は、四季折々のブルゴーニュの美しい風景と共に、心に響きました。

 ワインを飲むシーンが多いのですが、グラスの扱い方や飲み方がお洒落で、とても美味しそうだった。(本作を観てからは家で毎日ワインを飲んでいます。)

 心の癒される優しい映画でした。
 音楽も良かったし、ブルゴーニュの風景を小さく入れたエンドクレジットまでがお洒落で、映画の余韻が心に広がります。

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「天地に燦たり」川越宗一 [本]

天地に燦たり

天地に燦たり

  • 作者: 宗一, 川越
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/07/06
  • メディア: 単行本


 直木賞受賞作「熱源」をいつか読みたいと思っているのですが、その前に、2018年の川越宗一氏のデビュー作を読んでみました。

 豊臣秀吉の朝鮮出兵から島津の琉球国制圧までの詳細が描かれ、知らなかった歴史の部分でもあるし、とにかく面白かった。


 島津家に仕える侍大将、商人に姿を変えた琉球国の密偵、朝鮮国の被差別民の青年。三人の男が自身の誠を尽くし、動乱の世を逞しく生き抜く物語です。

 戦の場面は迫力溢れる文章に引き込まれ、著者の知識量や鋭い考察力に驚かされました。

 何のために戦うのか、何のために生きるのか、重いテーマですが考えさせられます。
 戦争の惨さは読んでいて辛いですが、それぞれの国、立場で貫く彼らの矜持は清々しく格好良かった。

 別々に描かれる三人の人生が徐々に交わって行く様はドラマチックです。ラスト、異なる道を駆け抜けた彼らが、礼を持って対峙する姿は感動的でした。

 根底に儒学の思想がありますが、共感できる教えが多く興味深かったです。

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「ビリーブ 未来への大逆転」 [旧作(DVD・TV)]

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On the Basis of Sex
2018アメリカ
監督:ミミ・レダー
出演:フェリシティ・ジョーンズ、アーミー・ハマー、ジャスティン・セロー、キャシー・ベイツ、サム・ウォーターストン、スティーブン・ルート、ジャック・レイナー、カイリー・スパイニー


 史上初の男女差別裁判に挑んだ女性、ルース・ベイダー・ギンズバーグの半生を描いた伝記映画です。

 現在87歳にしてアメリカの最高裁判事を務め、”RBG”の愛称で呼ばれる有名な人なのですが、恥ずかしながら知りませんでした。
 彼女についてはドキュメンタリー映画「RBG 最強の85才」も昨年公開されたようです。


 ハーバード法科大学院に入学しコロンビア大学に転校、学生結婚した夫と子育てをしながら猛勉強の末、主席で卒業。法律家となったルースが、その後の数々の男女差別訴訟に大きな影響を与えた、性差別が絡む税金裁判に勝利するまでのストーリーです。

 男女差別がまだ当たり前の時代。女性である事を理由に弁護士事務所に就職できず、大学教授職に甘んじるルース。しかしある日、彼女に性差別訴訟の弁護人となるチャンスが訪れ・・・。


 信念を貫くルースの人生に胸を打たれます。現在に至るまで社会を変えるためにどれだけの戦いがあったかを思い知らされました。

 病の夫を支える妻として、また二人の子供の母親としての姿も丁寧に描かれているので、ルースの人間性に惹きつけられる。子供の成長と、子供によって彼女自身も助けられているのがとても好ましかった。フェリシティ・ジョーンズの演技に終始引き込まれます。

 互いに尊重し合う夫婦の姿も感動的です。ルースを愛し、家族として応援し、同じ弁護士として励まし続ける夫を演じるアーミー・ハマーがとても素敵でした。

 法定シーンの緊張感と、力強いスピーチは胸に迫る。現在に生きる私達の未来もより良く変わって欲しいという願いを新たにしました。

 RGB、とても興味深い人だったので、ドキュメンタリー映画も観たいと思います。
***

RBG 最強の85才 [DVD]

RBG 最強の85才 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ファインフィルムズ
  • 発売日: 2019/12/03
  • メディア: DVD

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「アンダーグラウンド」 [旧作(DVD・TV)]

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Underground
1995フランス・ドイツ・ハンガリー
監督:エミール・クストリッツァ
出演:ミキ・マノイロビッチ、ラザル・リストフスキー、ミリャナ・ヤコビッチ、エルンスト・ストッツナー、スラブコ・スティマチ、スルジャン・トドロビッチ

 TVで鑑賞。ずっと観たいと思っていた、パルムドール受賞のクストリッツァ監督作品です。

 第二次世界大戦からユーゴスラビア内戦の時代。

 終戦を知らずに地下でドイツへのパルチザン活動を続ける旧ユーゴスラビアの人々と、戦争を利用して成り上がる人々の、悲喜劇が描かれていました。


 奇抜な映像とパワフルなジプシー音楽、クセの強い俳優陣の演技に圧倒されます。ブラックなユーモアの効いたストーリーは引き込まれ、戦争に翻弄される人間の姿がより鮮明に浮き上がっていました。明るいけれど重い、可笑しいけれど哀しい、不思議な感覚に包まれます。

 ユーゴスラビアの歴史に詳しければもっと深く味わえるのでしょうが、調べても理解しきれなかった。

 それでも、失われた祖国に対する監督の想いは伝わって来る。ラストシーンは何だか泣けて来て、胸が一杯になりました。


 内戦の時代に製作した作品だそうで、凄い監督だと改めて思います。ちなみに本作も監督がちょこっと出演していました。お決まりの動物も色々出てきます。

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「戦下の淡き光」マイケル・オンダーチェ著 [本]

戦下の淡き光

戦下の淡き光

  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 2019/09/13
  • メディア: 単行本
マイケル・オンダーチェ
田栗美奈子訳


 ”1945年、うちの両親は、犯罪者かもしれない男ふたりの手に僕らをゆだねて姿を消した。”

 謎めいた文章から始まります。

 戦時中に諜報活動に携わった母親の秘密を、主人公が少年期の回想と共に考察する物語。当事者だけでなく、後世にも暗い影を落とす戦争の怖さが伝わって来る内容でした。

 時間軸や現実と憶測の境が曖昧で、捉え所のない文章ですが、その心地良さに引き込まれます。

 著者は「イングリッシュ・ペイシェント」の原作者で、本は未読ですが映画のふわっとした感覚は似ていると思いました。

 ふと、昔の記憶や、昔に抱いた感情が蘇る瞬間があり、甘く切なく胸を揺さぶられます。

 ふわっとしたまま読み終えたのですが、主人公の人生に想いを馳せ、後からじわじわと哀しいような切ないような、気持ちが心に広がりました。


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「万波を翔る」木内昇 [本]

万波を翔る

万波を翔る

  • 作者: 木内 昇
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2019/08/24
  • メディア: 単行本

 木内昇氏も好きな作家です。

 開国から四年、幕府は外国局を新設したが、高まる攘夷熱と老獪な欧米列強の開港圧力というかつてない内憂外患を前に、国を開く交渉では幕閣の腰が定まらない。切れ者が登庸された外国奉行も持てる力を発揮できず、薩長の不穏な動きにも翻弄されて・・・勝海舟、水野忠徳、岩瀬忠震、小栗忠順から、渋沢栄一まで異能の幕臣そろい踏み。お城に上がるや、前例のないお役目に東奔西走する田辺太一の成長を通して、日本の外交の曙を躍動感あふれる文章で、爽やかに描ききった傑作長編!

 下手な感想よりも、この紹介文だけで本著の面白さが伝わるのではと思います。


 実在した人物が登場する歴史小説。主人公の田辺太一は名前も知りませんでしたが、幕末から維新にかけて外交に携わった実在した幕臣です。

 茶目っ気があって猪突猛進型の太一が、愛すべき主人公なので、感情移入してすいすい読めます。彼が江戸言葉で思った事をずけずけと言い、様々な上司の下、様々な同僚の中で、悩みながらも逞しく立ち回って行く様にわくわくしました。

 ユーモアある人物描写と、緊張感溢れる物語の展開は流石です。

 開国当初の外交はこの様な状況だったのかと、とても興味深かったです。日本の未来のために外交面で戦った人々の熱い想いに感動。味わい深い物語でした。


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「戦場のコックたち」深緑野分 [本]

戦場のコックたち

戦場のコックたち

  • 作者: 深緑 野分
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/08/29
  • メディア: 単行本

 「ベルリンは晴れているか」がとても良かったので、深緑野分さんのこちらの小説も読んでみました。

 第二次世界大戦に戦地に赴いた兵士たちの体験が描かれます。

 語り手のコックの青年兵士に共感しながら読み進みました。

 戦争の残酷さが伝わる文章ですが、そんな中でも兵士同士の絆が生まれる様子がしっかりと描かれています。戦地で起きた事件を兵士たちが生き生きと解決するエピソードの数々は引き込まれます。
 物語を通して生身の人間の姿が浮かび上がり、その尊い命が奪われた事実を改めて身近に感じさせられました。



「オーブランの少女」も読みました。

オーブランの少女 (創元推理文庫)

オーブランの少女 (創元推理文庫)

  • 作者: 深緑 野分
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/03/20
  • メディア: 文庫

 短編集です。どの物語も良かったです。特に、架空の国に起きた悲劇を描いたファンタジー『氷の皇国』は好きでした。


 軽快に読ませながらも重厚感のある深緑野分さんの文章は魅力的。シーンのひとつひとつが目に浮かび、映画やドラマを観ているような気分にさせられます。

 今後の著作にも注目したいと思います。


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ヴェンキ(チョコレート) [食]

 イタリアのチョコレート専門店、「ヴェンキ」の日本1号店が銀座に昨年オープンしたというので、先日の映画の帰りに寄ってみました。

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 お洒落な外観です。

 https://venchi.co.jp/

 食への拘りはないほうなのですが、ここのチョコレートはお土産でもらって食べてから忘れられなくて・・・。
 今まではEATALY(イータリー)でしか買えなかったので銀座出店は嬉しい。今年、池袋にも出店したようです。

 お値段高めですが、誘惑に勝てない美味しさです。
 私が一番好きなのは、”クレミノ ピスタチオ”です。

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