「必死剣 鳥刺し」

「必死剣　鳥刺し」
2010日
監督：平山秀幸
原作：藤沢周平

　邦画の時代劇は久しぶりに観ました。藤沢作品はやっぱりいいですね。



　江戸時代の海坂藩で、物頭の兼見三左エ門（豊川悦司）が藩主の右京太夫（村上淳）の側室連子（関めぐみ）を刺殺するという事件が起きる。斬首の刑を覚悟していた兼見三左エ門に下った処分は思いの外軽いものだった。そして一年後、彼は、近習頭取として役職復帰の命を受け、藩主の傍に仕えることになるのだった。

　静謐な語り口で、兼見が連子を手にかけた理由が徐々に明かされ、兼見の人間性が浮き彫りにされて行きます。一度は死を覚悟した男が何を思い何を感じながら生きているのか、多くを語らない兼見の心情を表情や一挙一動で見せる、豊川悦司の円熟味ある演技が印象的でした。

　物語が進むに連れ、兼見という男の魅力にどんどんひきつけられます。彼と、死別した妻（戸田菜穂）の姪の里尾（池脇千鶴）との関係の描き方も上手くて、兼見の里尾に対する決断は、男として最高の優しさではないかと感動してしまいました。池脇千鶴の演技は、里尾の慎み深さと、一途さと、色気の出し方の、程良さが絶妙で、一見地味ながら大きな存在感があり、本当に凄い女優だなぁと感心させられました。



　クライマックスの壮絶な立ち回りシーンは、その長さと迫力に圧倒されます。ボロボロの豊川悦司が凄く格好良い。まさに圧巻の、ずっと記憶に残るであろう殺陣でした。

　豊川悦司、池脇千鶴の他に、岸部一徳、吉川晃司、村上淳、関めぐみ、小日向文世、など魅力的な役者たちが揃って脇を固めています。日本ならではの四季の風景や家屋、人々の所作の美しさも、情緒豊かに描出されていて、重厚な作品に仕上っています。このような作品に出会うと、日本に生まれて本当に良かったと思います。☆5

コメント 5

なかなかしっかり作られた時代劇ですが、山田洋次監督の藤沢周平三部作と比べるとちょっと見劣りするかな。
主役の豊川悦司がいいですし、俳優はみな良い感じです。
主人公と切り合う事になる吉川晃司も健闘してますが、個人的には岸部一徳の何考えてるんだかわからない中老役が良かったです。
映画は面白かったですが、秘剣の「必死剣鳥刺し」がいささか謎です。
映画には秘剣の正体について一つアイディアがあり、それで映画の評価が上がってしまいました。
ラストは結構救いがないですねえ、、
原作通りなんで仕方がないんですが。

by きさ (2010-07-19 15:20) 

きささん
nice!＆コメントありがとうございます。
刀の下緒を解くというアイディア、なるほど～と思いました。
何の意味があるんだろう？と気になっていたので、
すっきりしました。ありがとうございます！
岸部一徳のいぶし銀の演技、素晴らしかったですね。
by Naka (2010-07-19 20:15) 

hetianさん
nobapapaさん
nice!をありがとうございます！
by Naka (2010-07-24 14:36) 

こんばんは。
毎日猛暑が続いておりますが、お元気ですか。私はなんとか生きております。暑さに弱いので。（＾＾）

豊川悦司、いいですよね～。昔はかっこよすぎて、かっこ悪かった（？）んですが、最近はコマーシャルなんかでも、コミカルな面もだして、いいなとおもっています。池脇千鶴もうまいですね。よさそうな作品です。

by coco030705 (2010-07-26 22:07) 

coco030705さん
こんにちは。
こう暑いと、体も頭も動きが緩慢になっていかんなぁと思っています（＾＾；
お互い頑張って乗り切りましょうね！

これは、心の奥に沁みるいい作品でした。
>豊川悦司
>昔はかっこよすぎて、かっこ悪かった（？）
わかります（笑）。
今は、かっこ悪いところが、かっこ良いですね。
男の色気をさりげなく漂わせている所がいいなと思います。
池脇千鶴は久しぶりに見たのですが、大人になったなぁと感心しました。
nice!ありがとうございます♪
by Naka (2010-07-27 08:51)