「海街diary」 [旧作(DVD・TV)]
OUR LITTLE SISTER
2015日本
監督・脚本:是枝裕和
原作:吉田秋生『海街diary』(小学館『月刊フラワーズ』連載)
出演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、加瀬亮、鈴木亮平、坂口健太郎、キムラ緑子、樹木希林、大竹しのぶ、リリー・フランキー、堤真一、風吹ジュン、池田貴史、前田旺志郎、中村優子、清水一彰
鎌倉の古い一軒家に暮らす3姉妹が、腹違いの妹を迎え入れ、それぞれに複雑な想いを抱えながらも日々の暮らしを通して家族としての絆を紡いでいく1年の物語を、鎌倉の四季折々の美しい風景とともに綴る。(allcinema解説より)
先日TV放送されたのを観ました。
原作は人気少女漫画家・吉田秋生の同名コミックスだそう。
家族を捨てた父の残した異母妹を受け入れ、共に生活を始めた4姉妹が、それぞれ成長しながら本当の家族になって行く軌跡が、情感豊かに綴られています。
離れて暮らした家族の空白の時間が、ゆったりと、少しずつ埋められて行く様が、切なくも温かい。
しっかり者の長女、奔放な二女、マイペースな三女。そして自分の存在が彼女らを苦しめていると引け目を感じる素直で純粋な異母妹・・・。それぞれが家族に対して複雑な想いを抱え、また自身の人生の問題にも直面する。その心の揺れを繊細に表現する女優たちの瑞々しい演技が心に染み渡る。
美しくて優しさに溢れた映画でした。生きる力を与えてくれる家族の存在の大きさに改めて気付かされます。
☆☆☆☆
「パリよ、永遠に」 [旧作(DVD・TV)]
DIPLOMATIE
2014フランス/ドイツ
監督:フォルカー・シュレンドルフ
出演:アンドレ・デュソリエ、ニエル・アレストリュプ、ブルクハルト・クラウスナー、ロバート・スタッドローバー、チャーリー・ネルソン
第二次世界大戦末期の1944年8月のパリの解放の舞台裏を描いた作品。ドイツに占領されて4年のパリ。連合軍がパリ市街に迫りドイツは劣勢に立っていた。撤退する際はパリの街を破壊せよとのヒットラーの命を受けたパリ防衛司令官のコルティッツ将軍は計画を進めていた。そこへスウェーデンの総領事のノルドリンクが現れ、パリの壊滅計画を中止するよう将軍の説得に当たる。
シリル・ジェリーのヒット舞台の映画化で、アンドレ・デュソリエとニエル・アレストリュプの二人は舞台でも主演を務めていたらしい。
映画もほとんどが二人の会話で構成されていて舞台を観ているよう。ノルドリンクが理性、感情、倫理、あらゆる角度から攻めてもコルティッツはなかなか説得に応じない。迫る刻限・・・。その緊迫感溢れる駆け引きは、結果は分かっていても、とてもエキサイティングなものでした。
パリは破壊されなかったけど、世界の多くの街と尊い命が失われた大戦。また、パリの解放後はドイツへの協力者に対する民間人による処刑が横行したらしい。戦争によって起きるあまりに多くの悲劇、それが今も続いている現実を思うと、とても遣りきれない気持ちになります。
名優二人の渋みのある重厚な演技が、想像を掻き立て、感動を深いものにしている。地味ではありますが、とても見応えのある映画でした。
☆☆☆
「ミレニアム」1~3、「ドラゴン・タトゥーの女」 [旧作(DVD・TV)]
「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」監督:ニールス・アルデン・オプレヴ
「ミレニアム2 火と戯れる女」監督:ダニエル・アルフレッドソン
「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」監督:ダニエル・アルフレッドソン
2009スウェーデン/デンマーク/ドイツ
原作:スティーグ・ラーソン
出演:ミカエル・ニクヴィスト、ノオミ・ラパス、他
スティーグ・ラーソン著「ミレニアム」3部作の映画化作品。WOWOWで放送した完全版。各3時間の長さでしたが、面白くて一気に観ました。
『ミレニアム』誌のジャーナリスト、ミカエルと、不遇の天才ハッカー、リスベットが手を組み、様々な敵に立ち向かう物語。1では少女の失踪事件の謎を追ううち凶悪犯罪の全容が明らかに。2では殺人事件の容疑者となったリスベットが真犯人を追うと同時に彼女の壮絶な過去が明かされる。3では、リスベットを巡る陰謀を暴くための闘いが描かれる。
ほとんど原作通りの展開で、少し前に本を読んだ時の興奮と衝撃が蘇って来ました。主演のミカエル・ニクヴィストとノオミ・ラパスは、一見地味ながら演技が上手い。すぐに原作のイメージに重なりました。スリリングでホラーのような世界観にどんどん引き込まれて行きます。
ミカエルとリスベットのちょっと切ない関係も良い。
本作の鑑賞後、ハリウッド版も観ました。
「ドラゴン・タトゥーの女」
THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO
2011アメリカ
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、スティーヴン・バーコフ、ステラン・スカルスガルド、ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン、ベンクトゥ・カールソン、ロビン・ライト、ゴラン・ヴィシュニック、ジェラルディン・ジェームズ、ジョエリー・リチャードソン
ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、ステラン・スカルスガルドなど、知っている俳優が多い分、スウェーデン版とはまた違った味わいがありました。フィンチャー監督のスタイリッシュな演出も引き込まれる。ダニエル・クレイグは恰好良いし、ルーニー・マーラはエキセントリックな美しさが印象的でした。
重厚なサスペンスが楽しめる映画でしたが、「ミレニアム」は3部全体を通して、リスベットの成長と、彼女の自由への闘いが描かれているので、本作だけではやや消化不良といった感じ。同じ配役で、2、3も観たいところですが、製作は未定のようです。
原作者のスティーグ・ラーソンは既に亡くなっていて、(2004年に没、「ミレニアム3」出版は2007年。)2015年にダヴィド・ラーゲルクランツが「ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女」を出版。邦訳も出ているので読んでみたいと思っています。
「ミレニアム2 火と戯れる女」監督:ダニエル・アルフレッドソン
「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」監督:ダニエル・アルフレッドソン
2009スウェーデン/デンマーク/ドイツ
原作:スティーグ・ラーソン
出演:ミカエル・ニクヴィスト、ノオミ・ラパス、他
スティーグ・ラーソン著「ミレニアム」3部作の映画化作品。WOWOWで放送した完全版。各3時間の長さでしたが、面白くて一気に観ました。
『ミレニアム』誌のジャーナリスト、ミカエルと、不遇の天才ハッカー、リスベットが手を組み、様々な敵に立ち向かう物語。1では少女の失踪事件の謎を追ううち凶悪犯罪の全容が明らかに。2では殺人事件の容疑者となったリスベットが真犯人を追うと同時に彼女の壮絶な過去が明かされる。3では、リスベットを巡る陰謀を暴くための闘いが描かれる。
ほとんど原作通りの展開で、少し前に本を読んだ時の興奮と衝撃が蘇って来ました。主演のミカエル・ニクヴィストとノオミ・ラパスは、一見地味ながら演技が上手い。すぐに原作のイメージに重なりました。スリリングでホラーのような世界観にどんどん引き込まれて行きます。
ミカエルとリスベットのちょっと切ない関係も良い。
本作の鑑賞後、ハリウッド版も観ました。
「ドラゴン・タトゥーの女」
THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO
2011アメリカ
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、スティーヴン・バーコフ、ステラン・スカルスガルド、ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン、ベンクトゥ・カールソン、ロビン・ライト、ゴラン・ヴィシュニック、ジェラルディン・ジェームズ、ジョエリー・リチャードソン
ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、ステラン・スカルスガルドなど、知っている俳優が多い分、スウェーデン版とはまた違った味わいがありました。フィンチャー監督のスタイリッシュな演出も引き込まれる。ダニエル・クレイグは恰好良いし、ルーニー・マーラはエキセントリックな美しさが印象的でした。
重厚なサスペンスが楽しめる映画でしたが、「ミレニアム」は3部全体を通して、リスベットの成長と、彼女の自由への闘いが描かれているので、本作だけではやや消化不良といった感じ。同じ配役で、2、3も観たいところですが、製作は未定のようです。
原作者のスティーグ・ラーソンは既に亡くなっていて、(2004年に没、「ミレニアム3」出版は2007年。)2015年にダヴィド・ラーゲルクランツが「ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女」を出版。邦訳も出ているので読んでみたいと思っています。
「悪童日記」 [旧作(DVD・TV)]
A NAGY FUZET
THE NOTEBOOK
LE GRAND CAHIER
2013ドイツ/ハンガリー
監督:ヤーノシュ・サース
原作:アゴタ・クリストフ
出演:アンドラーシュ・ギーマント、ラースロー・ギーマント、ピロシュカ・モルナール、ウルリク・トムセン、ウルリッヒ・マテス、ジョンジュヴェール・ボグナール
WOWOWにて鑑賞。
第二次世界大戦末期。田舎の祖母の農園に預けられた双子の兄弟。魔女と呼ばれる祖母に冷淡な仕打ちを受けながらも、生き抜くために心身を鍛え始める。不条理な死と隣り合わせの生活。その過酷な日々を二人は日記に綴る。
衝撃的でした。緊張感溢れる映像で、次は双子に何が起きるのか、どんどん引き込まれて行きます。
両親から捨てられたような形で身を寄せ合って生きる孤独な二人。彼らがどの様に世界を受け入れるのか、自己防衛のためどんな思考を巡らせるのか、どうやって感情を抑制するのか。子供にとって余りに重い試練には胸が痛みもしましたが、良くも悪くも子供は逞しい。
ラストで二人がとった行動は更に衝撃的でした。この先彼らの人生がどうなるのか気になって仕方ない。
原作は、ハンガリー出身の女性アゴタ・クリストフの、処女小説にして世界的ベストセラーとなった小説。「ふたりの証拠」「第三の嘘」と合わせて三部作になっているようなので、全て読んでみたいと思いました。
☆☆☆☆
「博士と彼女のセオリー」 [旧作(DVD・TV)]
THE THEORY OF EVERYTHING
2014イギリス
監督:ジェームズ・マーシュ
原作:ジェーン・ホーキング
出演:エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ、チャーリー・コックス、エミリー・ワトソン、サイモン・マクバーニー、デヴィッド・シューリス
車椅子の天才物理学者、スティーヴン・ホーキング博士の半生を描いた伝記映画。
余りに有名な人物ですが、彼の研究者としての功績はざっくりと描かれており、最初の夫人ジェーンとの関係に焦点が当てられていました。
本作でアカデミー賞主演男優賞に輝いたエディ・レッドメインの演技が素晴らしい。表情や仕草全てが博士に成りきっていて、大変な役作りだったろうと想像します。
病魔と闘いながら研究を続け実績を上げ本も執筆、博士のバイタリティと前向きな生き方には改めて尊敬の念を抱く。
同時に、彼を献身的に支え続けた妻ジェーン(フェリシティ・ジョーンズが好演)の存在の偉大さに感動しました。三人の子を抱えながらのいつ終わるかも知れないサポートは並大抵の困難ではなかったはず。
離婚、再婚と二人の道は分かれるのですが、そこに至るまでの心情の変化が丁寧に描かれていて、それぞれの想いが理解できる気がした。切ないけれど必然的なのかなとも思いました。
博士とジェーンをはじめ、登場人物が皆人間が出来ていて、美談過ぎる気もしましたが、なかなか興味深い内容でした。映画自体良かったですが、レッドメインの渾身の演技を観られただけでも貴重な体験でした。
☆☆☆☆
「プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角」 [旧作(DVD・TV)]
PRETTY IN PINK
1986
監督:ハワード・ドゥイッチ
出演:モリー・リングウォルド、アンドリュー・マッカーシー、ジョン・クライヤー、ハリー・ディーン・スタントン、アニー・ポッツ、ジェームズ・スペイダー
こちらもWOWOWで観賞。随分前にビデオか何かで観たと思うのだけれど、ほとんど内容忘れてました。30年も前の作品なのですね。
父娘家庭の貧しい女子高生が裕福でハンサムな男子と恋に落ちる話で、いわば身分違いの相手故に周囲の妨害を受けながらも、恋は成就するのか、二人は一緒にプロムに行けるのか・・・という正に学園青春ものの定番です。
青臭いラブコメと思っていたら、これがなかなかの力作。主人公の女の子が可愛いし、しっかりと自分を持っているし、応援したくなるようなキャラクターになっている。演じているのはモリー・リングウォルド、相手役はアンドリュー・マッカーシー、懐かしい顔ぶれです。
ちなみに、リングウォルドは現在もTVや舞台で活躍。マッカーシーは最近はTVドラマの監督としても活躍。ジェームズ・スペイダー主演の「ブラックリスト」の数エピソードの監督にも名前が挙がっています。
本作では、ジョン・クライヤー演じる 主人公に片想いする幼なじみの男の子も印象的でした。明るくて優しい、とても愛すべきキャラクターで、お金持ちで男前のマッカーシーよりも彼の方に好感を持ちました。
ハリー・ディーン・スタントン、ジェームズ・スペイダーが脇でオーラを放っています。
アニー・ポッツ (今年公開予定の新作「ゴーストバスターズ3」にカメオ出演するとか・・・?)、 ジーナ・ガーションも出演。本当に懐かしい役者ばかりで、皆若くて、嬉しくなってしまいます。
服装など古臭い感じはありますが、脚本、人物、音楽と、大切に作られているのがよくわかる、気持ちの良い映画でした。
ハワード・ドゥイッチ監督とジョン・ヒューズ脚本のコンビは、「恋しくて」も好き。
何となく新鮮な気持ちになれて、古くてシンプルな青春映画をたまに観るのも良いものだと思いました。
☆☆☆
「リスボンに誘われて」 [旧作(DVD・TV)]
NIGHT TRAIN TO LISBON
2013ドイツ/スイス/ポルトガル
監督:ビレ・アウグスト
原作:パスカル・メルシエ『リスボンへの夜行列車』(早川書房刊)
出演:ジェレミー・アイアンズ、マルティナ・ゲデック、メラニー・ロラン、ジャック・ヒューストン、トム・コートネイ、アウグスト・ディール、ブルーノ・ガンツ、レナ・オリン、クリストファー・リー、シャーロット・ランプリング
WOWOWにて観賞しました。
スイスで平凡な日々を送る孤独な高校教師ライムント。ある日自殺しようとした若い女性を助けたことから一冊の本に出会う。本に挟まっていたリスボン行きのチケットを手にした彼は本に導かれるように列車に乗り込む。そしてリスボンで、本の著者アマデウの人生を辿ることに・・・。
主人公ライムントを演じたのはジェレミー・アイアンズ。老齢になってもますますダンディで素敵です。
最初は精彩を欠いた老教師(それでも格好良いアイアンズですが・・・)が、アマデウの波乱に満ちた情熱的な人生、ポルトガル革命に命を賭けた人々の存在や余生を知るうち、何だか生き生きとしてくる。
物語は現在と過去を行き来しながらポルトガルの美しい風景と共に、ライムントの心の変化を丁寧に情緒豊かに綴って行く。聡明で率直なポルトガル女性との関係も静かに進展します。この女性を演じるのが「マーサの幸せレシピ」のマルティナ・ゲデック。とても魅力的な女優だと思いました。
他に出演は、安定感あるジャック・ヒューストン、メラニー・ロラン。そして、シャーロット・ランプリング、ブルーノ・ガンツ、レナ・オリンなど、実力派俳優が揃っています。特に、故クリストファー・リーの出演は感慨深かった。彼ら名優たちが作品の重厚さと品格を高めています。
ライムントがその本に魅せられたのは、自分が考えていた事がそこに書かれてあったから。それをきっかけに自身を見つめ直す彼の姿には凄く共感できました。
自殺未遂の若い女性の正体も明かされるが、過去は現在に繋がっている事を改めて考えさせられる。独裁政権や革命の事は加害者も被害者も語ろうとはしないという。だけど、ライムントに心の内を打ち明けた人々は皆安らかな表情を見せる。異国の訪問者によって彼らもまた長い苦悩や悲しみから少し解放されたような気がします。
静かで美しくてどこか癒される、いい映画でした。
☆☆☆☆
「暮れ逢い」 [旧作(DVD・TV)]
A PROMISE
UNE PROMESSE
2013フランス/ベルギー
監督:パトリス・ルコント
原作:シュテファン・ツヴァイク
出演:レベッカ・ホール、アラン・リックマン、リチャード・マッデン、マギー・スティード、トビー・マーリー、シャノン・タルベット
1912年のドイツ。大病を患い、自宅療養中の実業家ホフマイスターは、優秀な青年フリドリック・ザイツを個人秘書に迎え入れ、自宅で様々な雑務を任せる。ホフマイスターの屋敷に出入りする中で、彼の美しき若妻ロットと出会い、心惹かれていくザイツ。やがて彼は、屋敷の一室をあてがわれ、住み込みで働くようになるとともに、夫妻の息子オットーの家庭教師も兼任するようになり、ロットとの距離は一層近づいていく。もはやロットへの恋心を抑えがたくなっていくザイツだったが…。
(allcinema解説より)
アラン・リックマン演じるホフマイスターに着目して観ました。
その危うさを予感しながらも若く美しい妻との生活に魅力的な若い男を招き入れるのは、好奇心からか、妻の自分への愛を確かめる為か。或いは嫉妬する自己を試すマゾ的な衝動からか。そんな倒錯した愛はルコントらしい人物像にも思えました。ホフマイスターの心の葛藤を思わせるリックマンの細かい表情、演技が強く印象に残ります。
なかなか互いの愛を確かめられないザイツとロットとの関係は、気を持たせ過ぎ?とも感じましたが、そういう時代だったのかな?とも思う。
ラスト。ドイツ人が掲げるナチスの旗が不穏な空気を漂わせ、二人の未来に暗い影を落とす。原作者ツヴァイクの人生にも重なりますが、ここで彼らはユダヤ人なのかも知れないと思いました。
メロドラマのようなストーリーはあまり好みではないけれど、リックマンの登場する前半は興味深かったし、レベッカ・ホールが美しい。そして、哀愁漂う甘美な映像には引き込まれました。
☆☆☆
先週のアラン・リックマンの訃報はショックでした。
「ラブ・アクチュアリー」「ギャラクシー・クエスト」「いつか晴れた日に」など大好きな作品は一杯あります。「ダイ・ハード」の悪役も印象的でした。もちろん「ハリー・ポッター」のスネイプ先生も忘れられません。
彼が監督と出演を務めた「ヴェルサイユの宮廷庭師」が最近公開されましたが、劇場で観れば良かったと今になって思います。
本当に残念です。
「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」DVD [旧作(DVD・TV)]
CHEF
2014アメリカ
監督・脚本:ジョン・ファヴロー
出演:ジョン・ファヴロー、ソフィア・ベルガラ、ジョン・レグイザモ、エムジェイ・アンソニー、スカーレット・ヨハンソン、オリヴァー・プラット、ボビー・カナヴェイル、エイミー・セダリス、ダスティン・ホフマン、ロバート・ダウニー・Jr
ロサンジェルスの一流レストランで総料理長を務めるカール・キャスパー。人気料理評論家の来店に革新的な新メニューで挑もうとするも、オーナーに却下された挙げ句、評論家にも酷評され、ついに怒り爆発。その一部始終がSNSで拡散してしまい、店をクビになったばかりか新たな働き口もなくなってしまう。傷心のまま故郷のマイアミに戻ったカールは、前妻や旧友マーティン、息子のパーシーたちの助けを借り、キューバ料理の移動販売を始めることに。こうして、改装したオンボロ・フードトラックに乗り、パーシー、マーティンと3人で、移動販売をしながらロサンジェルス目指して大陸を横断していくカールだったが…。(allcinema解説より)
マイアミって、スペイン語を母国語とするキューバ人の多い都市なのですね。勉強になります(^^;)
料理が大好き、料理で客を喜ばせたい。カールの情熱が凄く伝わって来て、そんな彼が滅茶格好良いと思いました。元妻、元妻の元夫、友人と、いろんな人が支援したくなるのも頷けます。
愛嬌たっぷりにカールを演じ、監督・脚本も手掛けたのは「アイアンマン」の監督ジョン・ファヴロー。味わいの深い演技を見せています。ネットの評価に一喜一憂するところは実体験なのかなと想像しました。彼が“美味しい”と言ったら本当に美味しそう。出て来る料理がどれも美味しそうなのが、映画の魅力のひとつになっています。
旅を共にしながら、父の背中を見て息子パーシーにも変化が表れる。この父子のやりとりが微笑ましくてじんと来ました。子役のエムジェイ・アンソニーがとても可愛いです。
どの作品でも強烈な印象を残すジョン・レグイザモが陽気で頼れる相棒を好演。元妻のソフィア・ベルガラは綺麗で魅力的な女優だと思いました。その他ダスティン・ホフマン、スカーレット・ヨハンソン、ロバート・ダウニーJr.と、何気に豪華な共演です。
軽快なキューバ音楽に、背景に広がる壮大なアメリカの大地。ユーモア溢れる語り口で描かれる家族の絆、友情、自己実現の在り方が、とても幸せな気分にさせてくれる楽しい映画でした。
☆☆☆☆
「ブロークン・トレイル 遥かなる旅路」TVM [旧作(DVD・TV)]
BROKEN TRAIL
2006アメリカ
監督:ウォルター・ヒル
出演:ロバート・デュヴァル、トーマス・ヘイデン・チャーチ、グレタ・スカッキ、スコット・クーパー、クリス・マルケイ、ラスティ・シュウィマー、グウェンドリン・ヨー
エミー賞受賞など高い評価を得たアメリカのTV映画。NHKBSの録画を観たのですが、DVD化されており、レンタルもあるみたいです。
1890年代後半のアメリカ西部。ベテランのカウボーイ、プリントは、500頭の馬を売るため、甥のトムをパートナーに、群れをオレゴンからワイオミングまで移動させる旅路につく。長旅とはいえ、彼らの心配は悪天候とはぐれる馬に注意することぐらいだった。ところが、旅が始まって間もなく、図らずも2人は身売りされようとしていた中国人の少女5人を助けることに。言葉も通じない彼女たちを連れて旅を続けるハメになった2人は、そのために余計なトラブルまで招き寄せてしまうのだったが…。(allcinema解説より)
正義を貫く男達の西部劇であり、雄大な自然を旅するロードムービーであり、重厚な人間ドラマでした。
500頭もの馬が行く広大な原野。その度迫力の壮観な風景に圧倒される。そして全編に広がる深い郷愁、情感溢れる本当に美しい映画でした。3時間の長さですが、映像と物語に終始引き込まれました。
道中、インディアンと遭遇した時、通行料として馬2頭だ1頭だと交渉が始まり緊張が走る。しかし、プリントは木彫りの馬を差し出してこれで2頭だと交渉を成立させる。快く受けるインディアン。強い男同士の魂の交流が胸を打つ素敵なシーンでした。
中国人とプリント達の温かいやり取りも美しい。人種や境遇の違いを超えて存在する尊い人間愛。心の機微を伝える自然や行間の演出も絶妙でした。
とにかくプリントが実にいい男で、優しく誇り高いカウボーイの生き様が本当に格好良い。ロバート・デュヴァルの燻し銀の演技が感動的です。撮影当時は75歳前後だと思いますが、乗馬姿もガンアクションも様になっていました。「ゴッドファーザー」での演技や、近年では「ジャッジ 裁かれる判事」の名演が印象に残っていますが、素晴らしい、特別な存在の俳優だと改めて思いました。
朴訥で不器用な優しさにグッと来るトムを演じたトーマス・ヘイデン・チャーチ、聖母のような娼婦ノラを演じたグレタ・スカッキ、そして中国人の俳優達も好演。人間の真の価値について様々考えさせられました。
切なくて優しい余韻が続くラスト。とても味わい深い作品。傑作だと思います。
☆☆☆☆