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「僕と世界の方程式」 [旧作(DVD・TV)]

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X+Y
2014アメリカ

監督:モーガン・マシューズ
脚本:ジェームズ・グレアム
出演:エイサ・バターフィールド、レイフ・スポール、サリー・ホーキンス、エディ・マーサン、ジョー・ヤン、マーティン・マッキャン、ジェイク・デイヴィス、アレックス・ロウザー、アレクサ・デイヴィーズ

 WOWOWにて鑑賞しました。

 高校生数学オリンピックのイギリス代表チームの一員に選ばれた、数学の才能を持つ自閉症の少年ネイサンが、各国チームが集まる台湾合宿など様々な経験を通して成長する様を描いた作品。ネイサンを演じるのは「縞模様のパジャマの少年」「エンダーのゲーム」等のエイサ・バターフィールド。彼の美しい瞳と瑞々しい演技に引き込まれます。


 他人とのコミュニケーションが困難なネイサンが、合宿の仲間の中で少しずつ変化する姿が興味深い。ネイサンに芽生える他者への好きという気持ち、その戸惑いが繊細に描かれていました。

 ネイサンの母親ジュリーを演じているのがサリー・ホーキンス。大好きな父親を交通事故で失ってからますます心を閉ざす息子との心の距離に傷付き、孤独を募らせる女性を好演しています。彼女が「父親と何が違うの?」と息子に問いかける姿が切なかった。愛する想いを伝えるだけの事が本当に難しいのだと考えさせられました。

 ネイサンを指導する数学教師マーティンを演じたレイフ・スポールは、ティモシー・スポールの息子らしい。心身に問題を抱えるマーティンが再生する姿にも胸を打たれました。

 美しいラストに心が癒されます。切なくて温かくて、心に残るいい映画でした。

☆☆☆☆

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「ブルーに生まれついて」 [旧作(DVD・TV)]

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BORN TO BE BLUE
2015アメリカ/カナダ/イギリス

監督:ロバート・バドロー
出演:イーサン・ホーク、カーメン・イジョゴ、カラム・キース・レニー、トニー・ナッポ、スティーヴン・マクハティ、ジャネット=レイン・グリーン、ケダー・ブラウン、ケヴィン・ハンチャード


 WOWOWで鑑賞しました。

 1950年代にトランペットと歌で一世を風靡した伝説のジャズミュージシャン、チェット・ベイカーの転落と再起の半生を描いた映画です。この人物、恥ずかしながら今作で初めて知りました。


 絶大な人気を博すも麻薬依存で度々逮捕されるなどトラブル続きのチェットは、ある日麻薬絡みの暴力事件に巻き込まれ顎を砕かれ前歯を全て失ってしまう。トランペッターとして致命傷を負い、再起不能と思われたチェットだったが、彼は薬物の誘惑を断ち、再び表舞台に返り咲く決意を固める。

 チェットを演じるイーサン・ホークの演技が素晴らしくて圧倒されました。繊細で今にも壊れそうな存在感。退院直後に血だらけでトランペットを吹く衝撃的なシーンの後、苦痛に耐えながら練習を重ねる姿、プライドを捨ててまで演奏したいという想い。肉体も精神も傷だらけの彼を見ていて胸が苦しくなりました。

 それでいてチェットには無邪気な一面もあり、イーサンが不思議な色気を纏っています。チェットの再起を支える恋人ジェーンが彼を放っておけないのも良くわかる。常に儚さが漂う二人の絆は切ないけれど、胸を打たれました。


 本編中ジャズの名曲の数々がたっぷり聴けます。チェットが、苦しそうに、悲しそうに、歌い奏でる演奏と歌は素晴らしかった。

 My Funny Valentine、I've Never Been In Love Beforeは、イーサンが実際に歌っていて、脱力したような歌い方と表情がとてもセクシーです。トランペットはケビン・ターコットの演奏に吹き替えられていますが、イーサン自身も半年レッスンしたそう。ちなみにチェットの歌い方を聴いてジョアン・ジルベルトがボサノバを生みだしたという逸話もあります。


 全編に絶望感ともの哀しさが漂い、度々挟まれるモノクロの回想シーンがとてもロマンティックでした。

 チェットの破滅型の人生に惹かれてしまうのも事実ですが、ただ薬物の力を借りなくても人々の心を揺さぶる音楽が残せた人だと思いたい。

 イーサン・ホークは昨年観た「マグニフィセント・セブン」「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」の演技も良かったし、ますます脂が乗っている俳優だと思います。3月公開の「しあわせの絵の具 愛を描く人モード・ルイス」も気になります。

☆☆☆☆

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「炎の人ゴッホ」 [旧作(DVD・TV)]

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LUST FOR LIFE
1956アメリカ
監督:ヴィンセント・ミネリ
原作:アーヴィング・ストーン

出演:カーク・ダグラス、ジェームズ・ドナルド、アンソニー・クイン、パメラ・ブラウン、ジル・ベネット、エヴェレット・スローン、ニオール・マッギニス


 こちらも12月。ゴッホが気になって少し前に録画したものを観ました。

 青年期から37歳で自殺するまでのゴッホの生涯を描いた伝記映画です。

 父親と同じ伝道師となるも、貧しい労働者への献身が過ぎて破門され、弟テオの援助を受けて本格的に画家の道に進む。大失恋の後、パリへ。そこで多くの画家に刺激を受け、意気投合したゴーギャンとアルルで共同生活を始める。しかし、ほど無く二人の関係は悪化、耳切り事件を起こしたゴッホは精神病院へ入る。退院後はパリから少し離れた村オーヴェルで制作を続けるが、37歳の時ピストルで自ら命を断つ。・・・というドラマティックな生涯が綴られています。


 それぞれの時代の出来事を順に追いながら、ゴッホの代表作を紹介していて、ゴッホの全てがわかる年譜のような作品でした。

 ゴッホの多様で繊細でエモーショナルな作品の数々に改めて感動。描くことへの情熱というか、執念の凄さに圧倒されました。

 ゴッホを演じたカーク・ダグラスが素晴らしい。外見だけでなくゴッホの魂が乗り移ったような演技に引き込まれます。また、ゴーギャン役のアンソニー・クインも強烈な印象を残します。実物を見て現実を描いたゴッホとは対照的に、想像に重きを置いて描いたゴーギャン。今度はゴーギャンの人生も詳しく知りたくなりました。アカデミー賞で、K・ダグラスは主演男優賞にノミネートされ、A・クインは助演男優賞を受賞しています。

 作品が全く売れない中、テオがゴッホに資金援助を続けた事が不思議でしたが、本作を観て腑に落ちた気がします。兄への愛と芸術全体への理解がとても深い人だったのだろうと思いました。

☆☆☆☆



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「プロヴァンスの休日」 [旧作(DVD・TV)]

プロヴァンスの休日 [DVD]AVIS DE MISTRAL
MY SUMMER IN PROVENCE
2014フランス
監督・脚本:ローズ・ボッシュ
出演:ジャン・レノ、アンナ・ガリエナ、クロエ・ジュアネ、ユゴー・デシュー、オーレ・アッティカ、ユーゲ・オフレ、シャルロット・ドゥ・トゥルケイム


 パリから、プロヴァンスに暮らす堅物の祖父と優しい祖母の元に預けられることになったレア、アドリアン、テオの三人兄姉弟。初めて会う祖父との距離を縮める末っ子のテオをよそに、横暴な祖父に反発するレアとアドリアンだったが・・・。


 素朴な田舎町の日常と暖かな人情に触れるうち、絆を取り戻して行く家族の姿が温かく、時にユーモアを混じえて描かれています。

 祖父ポールを演じたジャン・レノが良い感じで老いていて、味わい深い演技に引き込まれます。

 アンナ・ガリエナ(『髪結いの亭主』の女優)も祖母イレーネを魅力的に演じている。聴覚障害を抱えるテオ(ルーカス・ペリシエ)の天使のような存在感に癒され、レア(クロエ・ジュアネ)、アドリアン(ユーゴ・デシウ)のそれぞれの成長にも和まされました。出演俳優の演技が皆上手いです。

 プロヴァンスののどかで美しい風景はそれだけでとても優しい気持ちになれるし、背景に流れる懐かしいポップスの数々も心地好い。老人と子どもの交流という題材の作品に外れは少ないと思うのですが、良い俳優が揃えば更に間違いないという見本のような作品。心温まる素敵な映画でした。

☆☆☆☆

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ジャン・レノが渋いです。


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「寒い国から帰ったスパイ」 [旧作(DVD・TV)]

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THE SPY WHO CAME IN FROM THE COLD

1965アメリカ
監督:マーティン・リット
原作:ジョン・ル・カレ

出演:リチャード・バートン、クレア・ブルーム、オスカー・ウェルナー、ペーター・ヴァン・アイク、シリル・キューザック、ウォルター・ゴテル、トム・スターン


 ジョン・ル・カレ原作の『寒い国から帰ってきたスパイ』を映画化。イギリス情報部のリーマスが密命を帯びて東ドイツに潜入した。彼への指令は、東ドイツ諜報機関の実力者、ムントを失脚させることだった。リーマスは、ムントに敵対するフィードラーに接触、ムントが二重スパイであると告発する。任務は上手くいき、ムントは査問機関にかけられることになったが…。(allcinema解説より)


 ジョン・ル・カレ原作の他の作品が観たくなり、以前テレビ放送された本作を録画していたのを思い出ました。


 緊張の連続。国の命運を背負った男たちの極限の駆け引きが面白い作品です。

 特にクライマックスの査問のシーンは怖かった。予想しなかった驚きの展開に鳥肌が立ちました。

 シナリオ通りに生活を偽装したり、味方をも欺いたり、スパイ稼業の苛酷さがひしひしと伝わって来る。クールな中に悲哀を感じさせるリチャード・バートンの渋い演技に終始引き込まれました。

 007のような格好良いスパイ映画も大好きですが、ル・カレの描く現実味のあるスパイ物は違った味わいがあって心に響きます。

 本作は1965年公開。半世紀以上経っても作品が全く色褪せていないのが素晴らしい。現在も第一線で活躍中のル・カレも凄いと改めて思いました。

☆☆☆☆



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「ヴェルサイユの宮廷庭師」 [旧作(DVD・TV)]

ヴェルサイユの宮廷庭師 [DVD]
A LITTLE CHAOS
2014イギリス

監督:アラン・リックマン
出演:ケイト・ウィンスレット、マティアス・スーナールツ、アラン・リックマン、スタンリー・トゥッチ、ヘレン・マックロリー、スティーヴン・ウォディントン、ジェニファー・イーリー


 英国の名優アラン・リックマンが97年の「ウィンター・ゲスト」に続いて2度目の監督を務めた歴史ロマンス。世界でもっとも有名な庭園の誕生に秘められた名もなき女庭師の愛と勇気の物語を描く。(allcinema解説より)


 ヴェルサイユ宮殿の庭園『舞踏の間』の建設に携わった女性庭師サビーヌ・ド・バラと、師である庭園建設の責任者で実在した人物、アンドレ・ル・ノートルとの魂の交流を描いたラブロマンスでした。

 悲しい過去を持つサビーヌと、どこか陰のあるル・ノートル、孤独な二人が庭園建設の過程で様々な困難に向き合いながら、いつしか惹かれ合う様子が情感豊かに描かれています。

 主演はケイト・ウィンスレット。自立した知的で強いサビーヌを魅力的に演じています。泥だらけで作業に没頭する姿が高貴で美しい。ル・ノートルが惹かれるのも大きく頷けました。

 そのル・ノートルを演じたマティアス・スーナールツは「リリーのすべて」「フランス組曲」「君と歩く世界」に出演していたベルギー人俳優。見る度にじわじわと気になって来る俳優です。本作での彼は、役に相応しくさりげない色気を感じさせる表情のひとつひとつに引き込まれる。彼の他の作品も観たくなりました。

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間もなく公開の「胸騒ぎのシチリア」より


 シンプルな恋愛物語ですが、17世紀という時代背景や抒情的な風景、豪華絢爛な宮廷文化がロマンスを盛り上げます。格調高い文芸作品のような味わいでした。言語が英語なので最初違和感があったが、詩的で美しい英語の台詞に次第に慣れていきました。

 国王ルイ14世として出演もしているアラン・リックマンの重厚な演技も心に響く。国王とサビーヌとの邂逅のシーンも印象的でした。リックマンにはもっと生きて多くの美しい作品を残して欲しかったと改めて残念に思いました。

☆☆☆☆



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「ブリッジ・オブ・スパイ」 [旧作(DVD・TV)]

ブリッジ・オブ・スパイ [DVD]

BRIDGE OF SPIES
2015アメリカ

監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:マット・シャルマン、イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
出演:トム・ハンクス、マーク・ライランス、エイミー・ライアン、アラン・アルダ、スコット・シェパード、セバスチャン・コッホ、オースティン・ストウェル、ウィル・ロジャース・マクロビー


 米ソ冷戦下の1957年、ニューヨーク。ルドルフ・アベルという男がスパイ容疑で逮捕される。国選弁護人として彼の弁護を引き受けたのは、保険を専門に扱う弁護士ジェームズ・ドノヴァン。ソ連のスパイを弁護したことでアメリカ国民の非難を一身に浴びるドノヴァンだったが、弁護士としての職責をまっとうし、死刑を回避することに成功する。5年後、アメリカの偵察機がソ連領空で撃墜され、アメリカ人パイロットのパワーズがスパイとして拘束されてしまう。アメリカ政府はパワーズを救い出すためにアベルとの交換を計画、その大事な交渉役として白羽の矢を立てたのは、軍人でも政治家でもない一民間人のドノヴァンだった。交渉場所は、まさに壁が築かれようとしていた敵地の東ベルリン。身の安全は誰にも保証してもらえない極秘任務に戸惑いつつも、腹をくくって危険な交渉へと臨むドノヴァンだったが…。(allcinema解説より)


 最初から最後まで緊張の連続でした。そして、身の危険も顧みず自らの信念に従い行動する主人公の姿にただただ感動しました。

 アベルの裁判の行方、スパイ交換の交渉の駆け引き、それぞれの国家の思惑、その全容が細やかにとてもスリリングに描かれていて、極上のサスペンスとなっている。1人対1人の交換でも困難なのに、1人対2人の交換を成し遂げることが出来るのか・・・最初から最後までハラハラどきどきでした。

 そして、任務の過程で浮き彫りになるドノヴァンの並外れた勇気と優しさを兼ねた人間性に魅了されました。

 
 実話ベースというのが凄い。歴史の重みをずっしりと感じるいい映画でした。脚本が良いし、トム・ハンクス、マーク・ライアンスの奥深い演技も見応え十分です。


 東西冷戦という暗く悲しい時代があった事を改めて思い起こし、現在の戦争に思いを馳せ、何とも遣りきれない気持ちになりました。帰国したドノヴァンが、フェンスを越える若者の姿にベルリンの壁を重ねるシーンが、強烈なリアリティを持って胸に迫ります。反戦映画としても素晴らしい作品だと思います。

 映画で大切に描かれたドノヴァンの不屈の精神、彼とアベルの国籍や立場を超えた人間同士の絆には、希望の光を見た気がして救われる思いでした。

☆☆☆☆




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「探偵物語」 [旧作(DVD・TV)]

探偵物語 角川映画 THE BEST [DVD]1983日本
監督:根岸吉太郎
原作:赤川次郎
出演:薬師丸ひろ子、松田優作、秋川リサ、岸田今日子、財津一郎、北詰友樹、坂上味和、ストロング金剛、山西道広、中村晃子、加藤善博、荒井注、蟹江敬三



 赤川次郎原作、根岸吉太郎監督作品。
 薬師丸ひろ子の主演映画3作目で、大学受験の為に休業していた彼女の復帰作でもある。松田優作との共演もあり、当時大きな話題になっていました。

 30年以上経って改めて鑑賞して先ず感じたのが、アイドル映画的な印象だったのが、実は物語の軸のしっかりした大人な映画だったのだということ。何気なく見始めたのですが止まらなくなってしまいました。名シーン、名台詞も沢山。脚本は鎌田敏夫だったのですね。

 女子大生の新井直美と、彼女のボディガードを依頼された私立探偵の辻山秀一が、辻山の元妻が巻き込まれた殺人事件の犯人探しに奔走する、というストーリー。直美が、一回り歳上の辻山に惹かれる心の機微が丁寧に描かれています。


 薬師丸ひろ子はまだ幼さを感じさせますが、生々しい大人の世界に触れて、少女から大人に成長する主人公を好演。そして探偵の辻山を演じた松田優作が、ちょっとコミカルな抑えた演技で色気があってとてもいい。ストーリーを引き立て、互いを輝かせる絶妙な組合せだと思いました。

 松田優作は本作が公開されて6年後に他界。そう思って観ると今更ながら本当に残念で仕方ないです。

 直美が辻山の部屋を訪れて想いを告白する長回しのシーンは、直美の胸の鼓動が伝わって来て物凄い緊迫感。固唾を呑んで見入りました。そして、直美の帰り道で流れる切ないテーマ曲・・・。二人の演技と一連の演出は、鳥肌が立つほどで特に凄いと思いました。

 ラスト、キスシーンからの終わり方も余韻があってとてもいい。

 岸田今日子、財津一郎など、脇を固める俳優陣も皆良かった。
 ディスコやファッション、ダイヤル式電話など、80年代の世相は懐かしかったです。

☆☆☆☆


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「『僕の戦争』を探して」 [旧作(DVD・TV)]

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VIVIR ES FACIL CON LOS OJOS CERRADOS
LIVING IS EASY WITH EYES CLOSED
2013スペイン

監督・脚本:ダビ・トルエバ
出演:ハビエル・カマラ、ナタリア・デ・モリーナ、フランセスク・コロメール、ラモン・フォンセレ、ホルヘ・サンス、アリアドナ・ヒル


 こちらもWOWOWで鑑賞。

 冴えない独身の中年英語教師アントニオが主人公。授業で歌詞を教材にする程ジョン・レノンを敬愛する彼は、ジョンの出演映画「ジョン・レノンの僕の戦争」がスペインで撮影されている事を知り、ジョンに会うため車でロケ地目指して旅に出る。

 道中アントニオはヒッチハイカーの女性ヘレンと少年ファンホと出会う。ヘレンは望まぬ妊娠をして預けられた施設から、ファンホは厳格な父親のいる窮屈な生活から、逃げ出していた。

 そんな、ちょっと人生に行き詰まった男女3人の奇妙な旅を綴ったロードムービーです。


 3人の交わす何気ない会話がとても温かくて心地好い。人情味があって、しかも全然押し付けがましくなく本物の優しさに溢れているアントニオ。彼と共に旅するうちに、ヘレンとファンホも次第に自身の人生と向き合う勇気を得ます。

 “人生は犬と同じ、怖がると噛みつかれる。” このアントニオの言葉には深みがあります。

 “ジョン・レノンに会って会話しよう!”というアントニオの発想が突拍子もなくて、最初は痛いと感じたのが、彼らの旅を観ていくうちにワクワクして来るから不思議でした。アントニオのことも段々と格好良く見えて来ます。

 3人が立ち寄る宿の主人と、彼の障害を抱えた息子の生き様や、貧困で学校に行けない子どもの姿など、閉塞的な社会情勢もさりげなく織り込みながら、人生の切なさも生きている証だと愛おしく感じさせてくれるような、力のある作品でした。


 当時の映像も挟みながら、「ヘルプ!」に始まり「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」(原題はこの歌詞から来ている)に至る、ザ・ビートルズの曲の使い方が上手いです。


 日本での公開はラテンビート映画祭でのみだったようですが、本国スペインではゴヤ賞6部門受賞等、高評価を得た作品らしい。劇的な出来事もないし、登場人物はちょっぴり成長するだけ。地味めな作品ではありますが、心の奥に響く素敵な映画でした。切なくて温かい余韻が残ります。

☆☆☆☆

「僕の戦争」を探して [DVD]



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「ドローン・オブ・ウォー」 [旧作(DVD・TV)]

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GOOD KILL
2014アメリカ

監督・脚本:アンドリュー・ニコル
出演:イーサン・ホーク、ブルース・グリーンウッド、ゾーイ・クラヴィッツ、ジェイク・アベル、ジャニュアリー・ジョーンズ、ディラン・ケニン、ピーター・コヨーテ


 ラスベガス郊外で美しい妻と2人の子どもに囲まれ満ち足りた生活を送るアメリカ空軍のトミー・イーガン少佐。かつてF-16戦闘機のパイロットとして活躍した彼は、現在はドローン操縦士として政府のテロリスト掃討作戦に貢献していた。そんな彼の赴任地はラスベガスの空軍基地内のオペレーション・ルーム。そこではるか中東上空を飛ぶドローンを遠隔操作し、テロリストと思われる敵に対して空対地ミサイル“ヘルファイア”を撃ちこむのが彼に与えられたミッションだった。時には民間人を巻き添えにしてしまうこともあるが、それでも一日の任務を終えれば、家族のいる温かな自宅が待っていた。そんな奇妙な二重生活に違和感は募るばかりで、次第に神経をすり減らしていくトミーだったが…。(allcinema解説より)


 昨年公開していた時に、観ようか迷って観られなかった作品。WOWOWで観ることができました。

 「ガタカ」のコンビ、アンドリュー・ニコル監督&イーサン・ホーク主演です。「ガタカ」は美しくてもの悲しくて心に残る作品でした。その他に、ニコラス・ケイジ主演の「ロード・オブ・ウォー」もニコル監督作品。こちらもイーサン・ホークが出演していました。


 標的を定め、一定の手順に従ってボタンを操作するだけ。人も建物も一瞬にして吹き飛ぶ。そして、任務遂行を確認した時の合図が“Good kill”。本作の原題です。

 コントロール室からドローン爆撃するシーンが何度も繰り返されるうち、テロリストの死にも民間人の死にもだんだん慣れて来る。一種のゲームのようで現実の気がしない。そのことがとても恐ろしいと思いました。

 アメリカの平穏な生活と青い空が、色彩のない軍のモニターの映像とは対照的でしたが、こちらもまた幻のように思えて来ます。

 戦地の米兵の休息のために見張り役を務めた際には、”いい仕事をした”とトミーの心が安らぐ瞬間もあるものの、任務と良心の狭間でトミーの精神は次第にバランスを崩して行く。自国の平和のため、家族を守るために、意義ある任務だと言う同僚も、そう自身に言い聞かせているだけに見える。正義とは何だろうと分からなくなります。

 ますます渋味を増したイーサン・ホーク、そのリアルな演技に終始引き込まれました。非情な任務に心を病んでいくトミーの様。ラストの彼の行動。かなりショッキングでした。


 ドローンの軍事利用は急速に進んでいるらしい。12月には、同じくドローンによる現代の戦争の実態を描いた「アイ・インザ・スカイ 世界一安全な戦場」という映画も公開されるようです。こちらはヘレン・ミレン主演。アラン・リックマンの遺作です。

 現代の戦争の現実を突き付けられ、考えさせられる。でもまだまだ受け止め切れないし、決して楽しい気分にはなれないけれど、観ておいて良かったと思える映画でした。

☆☆☆☆



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