「サロメ」原田マハ [本]
オスカー・ワイルドが著した背徳の戯曲「サロメ」。その挿絵で一躍時代の寵児となり、25歳で夭折した天才画家オーブリー・ビアズリーの壮絶な人生と、”「サロメ」出版の秘密”をテーマにした伝記フィクションです。
女優としての野心に燃え、弟オーブリーに異常なまでの執着を示す姉メイベルの視点で、激しい愛憎の世界が展開します。
オーブリーとワイルド、メイベル、更に男色家ワイルドの愛人を加えての、どろどろした四角関係。常に破滅の予感が付きまとう物語にぐいぐいと引き込まれます。フランス語で書かれた「サロメ」の英訳を巡る秘密が明かされた時は、あっと驚かされました。
ビアズリーの絵は目にした事はあると思うのですが、じっくり鑑賞した事はありません。これほどまでに激しい人生だったことはとても興味深かった。
原田マハさんの解説が面白いので、読んでいるうちにビアズリーの絵を観たくて仕方なくなります。
退廃的で危険なワイルドに魅了されるオーブリーを救い出そうと画策するメイベル自身が常軌を逸して行く・・・。そして皮肉な結末。
人物描写が上手いので、彼女の行動に説得力があり、ゾクッとする怖さです。最後の方には、メイベルと”悪女”サロメが完全に重なって見えました。
オーブリー・ビアズリーには選ばれた天才だけに見える世界があったのだろうと思うと、怖いけれど魅惑的です。
とても読み応えのある小説でした。