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「火影に咲く」木内昇 [本]

火影に咲く

火影に咲く

  • 作者: 木内 昇
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/06/26
  • メディア: 単行本

 幕末の志士と女性たちの関係を通して、時代に翻弄された人々の哀感を謳った6つの短編が収められています。

 沖田総司、高杉晋作、坂本龍馬、中村半次郎など、動乱の時代を生きた志士たちの人生の一瞬が切り取られ、関わった女性たちの存在から、彼らの儚くも美しい生き様が鮮やかに浮かび上がってきます。

 本当に物語のような出来事があったかも知れないと想像すると、歴史に名を残した志士たち、名もない人々、誰もがかけがえのない人生を懸命に生きていたのだと、切ないけれど救われたような気持ちになりました。死と隣合わせの男たちを見つめる女たちの心の強さも印象的です。


 大河ドラマの「西郷どん」を観ているのもあって、時代背景がくっきりと浮かび、ひたむきに生きた人々の想いが胸に突き刺さりました。

 木内昇氏の作品は、人間への愛おしさが詰まった文章が魅力的です。登場人物の細やかな心理描写が味わい深く、いつも物語の世界に引き込まれます。本作の短編もどれも深く心に残りました。



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「オリジン」ダン・ブラウン [本]

オリジン 上

オリジン 上

  • 作者: ダン・ブラウン
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/02/28
  • メディア: 単行本

オリジン 下

オリジン 下

  • 作者: ダン・ブラウン
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/02/28
  • メディア: 単行本

 お馴染み、ダン・ブラウンによる宗教象徴学者ロバート・ラングドンが主人公のシリーズ5作目です。

 今回の舞台はスペイン。宗教と科学の立場を巡る殺人事件に遭遇したラングドン教授が、人類の起源の謎に迫ります。

 われわれはどこから来たのか。どこに向かうのか。この人類最大の謎に対する答えを公表しようとしたラングドンの元教え子でコンピュータ科学者のカーシュが、ビルバオ・グッゲンハイム美術館の発表の席で暗殺される。スペイン王宮や宗教界の関与を疑い、自らも身の危険を感じたラングドンは美術館の女性館長アンブラと逃亡、人工知能ウィストンに助けられながらカーシュの発表を完遂すべく奔走します。


 スピーディーに展開するストーリーにぐいぐい引き込まれる。次々と暗号を解読しながら危機を乗り越えるラングドンの活躍が小気味よいです。カーシュの発表に関連して発生する数件の殺人事件。はらはらどきどきのアクションもあります。

 カサ・ミラ、サグラダ・ファミリアといったガウディの作品、ニーチェやブレイクの引用など登場し、芸術に関するうん蓄の数々がどれも興味深い。

 カーシュの発見が明らかになる場面では、実証の説明や宗教と科学に対する理論が長くて頭が疲れましたが、説得力がありました。人類の未来について考えさせられます。

 最後に明かされる一連の事件の真犯人の正体・・・。予想はついていたものの、震撼させられました。


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「ミレニアム5 復讐の炎を吐く女」ダヴィド・ラーゲルクランツ [本]

ミレニアム5 復讐の炎を吐く女 上

ミレニアム5 復讐の炎を吐く女 上

  • 作者: ダヴィド ラーゲルクランツ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/12/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

ミレニアム5 復讐の炎を吐く女 下

ミレニアム5 復讐の炎を吐く女 下

  • 作者: ダヴィド ラーゲルクランツ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/12/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 背中にドラゴンのタトゥーのある天才ハッカー、リスベット・サランデルがヒロインの犯罪ミステリーのシリーズ5作目です。やっと読むことができました。

 今回のストーリーは、リスベットが自らの子供時代を調査する中で浮かび上がる非人道的な研究の実態を暴いて行くというもの。
 冒頭から女子刑務所に収容されたリスベットが登場し、刑務所内の“悪”に闘いを挑む。その一匹オオカミ的な行動が格好良くて、彼女との再会にワクワクしました。

 本編でもジャーナリストのミカエルがリスベットを助けて奔走します。強い信頼で結ばれた二人の絶妙な距離感がいいです。故ラーソンが築いた世界観を引き継ぎ、リスベットの人物像を更に掘り下げ発展させるラーゲルクランツの筆力が凄いと思いました。

 登場人物が多くて、それぞれに濃厚なドラマがあるので先が気になって仕方がない。テンポ良く場面が切り替わるので、映像が鮮明に浮かんでさくさく読み進めました。


 読み終えた時は痛快感で満たされます。同時に物語が終わった寂しさも感じて、早くまたリスベットに会いたいと思いました。6作目も出版の予定があるらしいので楽しみです。


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「たゆたえども沈まず」「ゴッホのあしあと」 [本]

たゆたえども沈まず

たゆたえども沈まず

  • 作者: 原田 マハ
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/10/25
  • メディア: 単行本


「たゆたえども沈まず」原田マハ著

 19世紀末から20世紀にかけてパリで日本美術を広めた日本人の画商、林忠正は実在した人物らしいです。しかし彼と、画家のフィンセント、弟で画商のテオのゴッホ兄弟に交流があったという記録は残っていない。本著はもし彼らが出会っていたら、という仮定の下で書かれたフィクションです。

 林の部下で架空の人物、加納重吉を加えた4人の交流を通じて、ゴッホ兄弟の数奇な運命を描いたストーリーは非常に読み応えがありました。当時のパリの浮世絵ブームやそれらが印象派に与えた影響も興味深かったです。

 芸術に造詣が深い原田マハ氏ならではのテーマと魅力的な文章。彼女が描く芸術の世界は本当に面白くてワクワクします。


 印象派が少しずつ認められ始めた時代、更にその先を目指したために不遇のままこの世を去ったフィンセントと、彼を支え続けるも苦悩を深めて行くテオ。互いへの焦燥、怒り、負い目、様々な葛藤を超えた兄弟間の深い絆がリアルに表現されていました。

 彼らの激しくも儚い人生を思うといつも胸が痛みます。しかし、小説のような、ゴッホ兄弟と林や加納との交流が本当にあったかも知れない、そう思うと彼らの魂だけでなく、私まで心が癒される気がして、物語の力を改めて感じました。



 この後「ゴッホのあしあと」も読みました。

ゴッホのあしあと 日本に憧れ続けた画家の生涯 (幻冬舎新書)

ゴッホのあしあと 日本に憧れ続けた画家の生涯 (幻冬舎新書)

  • 作者: 原田 マハ
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2018/05/30
  • メディア: 新書

「ゴッホのあしあと」原田マハ著

 「たゆたえども沈まず」執筆に当たっての著者の想いや、ゴッホの作品の解釈、フランスのゴッホ所縁の地を辿った旅の感想など、こちらも面白い内容でした。


 ちなみに「たゆたえども沈まず」はパリ市の歴史の象徴で、古くから使われている言葉だそうです。何度苦難を経験しても決して滅びる事なくその度に復活した、そんなパリの人々の誇りを表す言葉。苦しみながら多くの傑作を残したゴッホに正に相応しいと思います。



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「ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女」ダヴィド・ラーゲルクランツ [本]

ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (上)

ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (上)

  • 作者: ダヴィド ラーゲルクランツ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/12/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (下)

ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (下)

  • 作者: ダヴィド ラーゲルクランツ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/12/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 スウェーデンの大ベストセラーミステリーの続編。天才ハッカーのリスベットと”ミレニアム”誌のジャーナリスト、ミカエルが協力して犯罪の真実を暴いて行く物語です。1~3は本当に面白くて私もはまりました。「ミレニアム3」を執筆後病死した著者スティーグ・ラーソンの後を引き継いだのは、ジャーナリストで作家のダヴィド・ラーゲルクランツです。


 ある犯罪組織の調査を始めていたリスベットは、人工知能の世界的権威であるバルデル教授に接触。その事に気づいたミカエルも、教授と連絡を取ろうとする。直後教授が何者かに暗殺される事件が発生。

 暗殺犯を目撃したため命を狙われる博士のサヴァン症候群の息子アウグストを救ったリスベットは、ミカエルと共に、事件の背後にある犯罪組織とアメリカの情報機関NSAの陰謀を解き明かして行く。


 雑誌ミレニアムの存続の危機、リスベットの過去、アウグストの人生、様々な要素が絡み合って、はらはらワクワクの連続です。卓越した頭脳と行動力で敵と戦い、独自のやり方で悪に正義の鉄槌を下すリスベットが実に格好良くて、痛快でした。彼女を支え続けるミカエルとの絆もぐっと来ます。

 登場人物が多いが、各性格や人物相関が丁寧に描写されているので、物語に説得力があるし奥行きがあります。場面が頻繁に転換する構成が、緊迫感をより高めている。

 作家が変わっての続編に不安がありましたが、読み始めて直ぐにミレニアムの世界に入り込みました。満足感と共に、読み終わると何だか淋しい。リスベットを狙う強敵もまだ残っているので、5、6、と更なる続編を期待します。本作は映画化の計画もあるとか。そちらも楽しみです。



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「少年の名はジルベール」竹宮惠子 [本]

少年の名はジルベール

少年の名はジルベール

  • 作者: 竹宮 惠子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2016/01/27
  • メディア: 単行本

 少し前に、NHKEテレで放送した浦沢直樹の漫勉「萩尾望都」を観たのですが、萩尾望都さんの描画の細部への拘りと、漫画に対する情熱に感動しました。『少女漫画の神様』と称される今でも“キュンキュンしながら描いている”という言葉が素敵だと思いました。

 その萩尾望都さんと竹宮惠子さんが、同学年で同居していた時代があったことは初めて知りました。しかも、竹宮惠子さんが萩尾望都さんに嫉妬と憧憬の複雑な想いを抱いていたことは衝撃的でした。

 本著では、デビューから「風と木の詩」が世に出るまでの紆余曲折が詳細に綴られていて、増山法恵さんというブレーン的存在の人との関係や、出版社とのやり取り、製作の苦労、努力など、とても興味深い内容でした。かなり面白いです。

 凡人の私とは住む世界の全く違う漫画家の人たちですが、本著は様々な漫画家の名前が出てきて、70年代の空気を感じることもでき、少女漫画大好きだった幼い頃の自分の気持ちが蘇って、胸が締め付けられました。そして、漫画は、私にとって確かに人間の心の奥深さを学ぶ媒体のひとつだったと思いました。

 マンガを新たなステージに引き上げ、社会さえも変えた(確実に変わったと思います。)竹宮惠子さんの偉業を改めて実感することのできる一冊でした。


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「よこまち余話」木内 昇 [本]


よこまち余話

よこまち余話

  • 作者: 木内 昇
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2016/01/22
  • メディア: 単行本

 その路地は秘密を抱いている。ここは、「この世」の境が溶け出す場所。お針子の齣江、“影”と話す少年、皮肉屋の老婆らが暮らす長屋。あやかしの鈴が響くとき、押し入れに芸者が現れ、天狗がお告げをもたらす。(「BOOK」データベースより)


 木内昇さんの美しい日本語が大好きで新刊は必ずチェックするのですが、本作も期待以上の、心に響く素敵な小説でした。

 小さな路地の小さな長屋でお針子を生業にひっそりと暮らす齣江という女性を中心に、そこに集う人々の人間模様が17の短編になって綴られています。

 時代は大正か昭和初期の頃か。つましい日本の生活や四季の変化が美しい文章で表現されている。

 凛とした佇まいの齣江、謎めいた老婆のトメさん。進学に悩む貧しい家庭の少年と、その母や兄の想い。和菓子屋の主人と娘婿の関係、家業を継いだ質屋や糸屋の仕事への向き合い方など、登場人物たちのささやかで真っ直ぐな人生が、とても切なく優しく心の奥に染み渡ります。

 現実と夢が溶け合うような神秘的な世界、そこには人生の真実が在るような気持ちにさせられる。人間の心の深さを改めて感じ、現在の、過去の、自分の大切な人たちのことを想い起こさせてくれるような小説だと思います。



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「その女アレックス」「悲しみのイレーヌ」ピエール・ルメートル [本]

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

  • 作者: ピエール ルメートル
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/09/02
  • メディア: 文庫

 イギリス推理作家協会賞受賞作。日本でも「本屋大賞」第1位(翻訳小説部門)など。

 若い女性の監禁事件。捜索が進むにつれ、その女アレックスの驚愕の秘密が明らかになる。残酷な描写、痛ましい描写に震撼しながらも、二転三転するストーリー展開が気になって読み止まらなくなりました。救いようのない結末は後味悪いですが、なかなか読み応えのあるサイコサスペンスでした。

 事件の陰惨さとは対照的に、人間味溢れる捜査官たちの姿にはホッとさせられる。このキャラクターたちが魅力的なので本作の前に書かれた「悲しみのイレーヌ」(邦訳されたのはこちらが後)も読みました。

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/10/09
  • メディア: 文庫

 小説を模しての猟奇的殺人、そしてイレーヌの運命を知っているので、とても怖い内容でした。そして、最後に判明する斬新な仕掛けに驚かされました。こちらもぐいぐい引き込まれるストーリーでした。


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「一路」 浅田次郎 [本]

一路(上) (中公文庫)一路 (上)  (中公文庫) 一路 (中公文庫)


 今週からNHKのBSプレミアムでドラマが始まるようですが、その前に原作を読んでみました。


 お家の存亡を賭けた一世一代の参勤交代を、機知と団結力で乗り切って行く痛快な時代小説です。

 愛嬌のあるお殿様と個性的な家来たちの姿がユーモア溢れる文章で細かに描写されていて、笑いあり涙あり。はらはらわくわくしながら、とても楽しく読み進みました。

 その名の通り真っ直ぐで忠誠心に厚い主人公、一路が清々しくていい男。彼が示す『一所懸命』の格好良さに感銘を受けました。

 現代社会で忘れかけている日本の良いところが一杯詰まっている作品です。

 ドラマでは、永山絢斗演じる一路はじめとする各人物像はもちろん、中山道と各宿場町の江戸情緒の残る風景を映像で見られると思うと凄く楽しみです。



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「ベルサイユのばら ⑪エピソード編Ⅰ」 池田理代子 [本]

ベルサイユのばら 11 (マーガレットコミックス)

ベルサイユのばら 11 (マーガレットコミックス)

  • 作者: 池田 理代子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/08/25
  • メディア: コミック

 40年ぶりの新刊。4編の新作エピソードと、いくつかのコラム、作者のインタビューも盛り込まれています。登場人物のその後や、語られていなかった物語。

 小学生の頃、コミック本を友達に借りて読んだ時の興奮と切ない気持ちがよみがえりました。今思うと、歴史の面白さを知ったのはこの本がきっかけだった気がします。

 大人になって、文庫版をまとめて買って読み直しましたが、改めて感動、本当に傑作だと思います。娘も気に入っていて、本巻は彼女が買ったので読む機会を得ました。Ⅰということは次巻も出るのでしょうか・・・楽しみです。


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